食器に使う樹種の検討

木製食器に求められるもの

木の器の良い所は割れにくい、熱湯を注いでも熱くならない。質感が良くて、温かみがあるし、肌触りも良いなどが挙げられます。しかし、電子レンジや食洗機などは使えない。何よりも高くつくというのが最大の欠点でしょう。

朴木のマグカップ取ってなし

そのようなことから、丈夫で長持ちしてかつ、木の質感を活かした日常使いの食器というようなイメージが浮かびます。食器などの工芸品は、日常的に使ってこそ価値があると思うので、高価である分丈夫で長持ちは必須の条件だと思います。また、メンテナンス(サンドペーパーなどで磨く)することで新品のように復活してくれるのも魅力の一つではないかと思います。それで仕上げは、今のところ液体ガラス塗料を使用しています。浸透型で、十分な強度もあり、木の持ち味を最も損なわない仕上げだと思います。造膜型のウレタン塗料などを使用すれば、樹種であまり悩む必要はないのかもしれませんが、木の持ち味を十分に残しながら丈夫で長持ちする手頃な木製食器を作るとなると悩みは膨らみます。

そのような条件を満たす木製食器を作るためには、どのような樹種を選択すれば良いのでしょうか。

水に強くて腐りにくいこと

まず、強度の問題です。木が有機物である限り、電子レンジには入れられません。これはどうしようもないこととして諦めなければなりませんが、水に強くて腐りにくいということは条件になります。

槐のお椀

水に強いという点で1番に浮かぶのは、ヒノキです。ヒノキ風呂など昔からありますし、水に強くて腐りにくい代表選手です。ヒバなどもヒノキに準じる強さを持っていて、よくウッドデッキなどに使われていることから腐りにくい木といえるでしょう。さわらというヒノキの仲間も強そうです。

それ以外では、ケヤキなど広葉樹は密度が高いので丈夫だと思えます。逆に広葉樹でも、ブナやブラックチェリーなどは、水を含むと歪みます。乾くと元に戻るのですがあまり食器に向いているとは言えないようです。スギなどは、比重が軽くて柔らかく腐りやすいので全くダメだろうと思います。

食器に向いている樹種

ヒノキ、ヒバ、サワラ。欅、槐、なら、朴木、メープルなど

食器に向いていない樹種

杉、ブナ、チェリーなど

臭いの問題

ヒノキとヒバのお湯呑み

実際に使ってみると、お皿などではそれほどでもないですが、お湯呑みやお椀など口につけて使う食器の場合は、匂いが気になります。特に熱いものを入れると、木の持つ特有の臭いが気になる場合があります。ヒノキやヒバなどは、強い臭いを放ちます。もちろん悪臭というような臭いではないので、それが気にならない人もいますし、良い匂いと感じる方もいます。しかし、食器である以上無臭が良いに決まっています。それで臭いの少ない樹種というと、槐や欅ということになります。ナラは結構臭いが気になります。さらによく乾燥していることが大事です。

臭いが少なくて、耐水性もある樹種

欅、槐、さわら、メープルなど

臭いの対策はないものか

臭いも少なくて、強度もある樹種というとどれも高価であったり、手に入りにくいものばかりです。もう少し確保しやすいひばやヒノキなどは使えないものかと思います。臭いを消す方法ですが、ひとつはウレタン塗料など増膜型塗料を塗って仕上げる方法です。しかし、木の本来の持ち味を生かすという点であまり積極的にはなれません。また、熱に対してもウレタン塗料などでも80℃程度なので熱湯には耐えられないという不安も残ります。その他のラッカー塗料などはもっと弱いはずです。造膜型塗料ではセラウッドファニチャーと言う塗料が300℃まで耐えるので使うとすれば、唯一この塗料だと思います。比較的膜が薄いようなので、木の持ち味を損なうことも最小限に抑えらるようです。それでも、メンテナンスは一度塗料を全部剥がして塗り直さねばならないので、丈夫で長持ちという点でも不安は残ります。

二つ目は、天日干しをするという方法です。ヒバ材などをひと月ほど外気に触れるところで干しておくと臭いが消えていきます。時間がかかりますが、この方法だと、浸透型液体ガラス塗料を塗って仕上げることができます。木の持ち味を活かしながらメンテナンスもサンドペーパーで磨くことで新品と同じように復活させることができます。

天日干しをしているヒバのお椀とマグカップ

そのようなことで、けやきや槐、メープルなどを使用するのが基本となるわけですが、手に入りやすいヒバなども利用していきたいと思っています。天日干しはまだ実験中というところですが、うまくいけば作品として紹介していきたいと思います。

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