なぜ木製花瓶にこだわるのか

そもそも木製である限り水には弱いものです。仕上げる塗料についてもほとんどの場合、常時水に浸かっている状態を想定されていません。昔は、檜は水に強くて腐りにくいので、風呂桶などに利用されていたりしますが、現在では一部を除いてホーローやプラスチックなどもっと耐水性の高い材料があるので、あえて水に弱い木を水回りに利用する必要は減っていると思われます。市場に出回っている多くの木製花器も一部を除いて、直接水を入れるタイプではなくガラス瓶などを利用して、木が直接水に触れないようにデザインされています。花器は生け花やフラワーデザインの一部であり、木の持つ落ち着きや風合いは花そのものを活かす場合が十分あり得ることです。その長所を活かしつつ水に弱いという弱点を補うためにガラスなどを利用するのは、非常に合理的なことだといえます。

それでも、私はガラスなどとコラボせずに木材だけで、花瓶を作りたい。その思いが強いのです。

木をくりぬいてその中に水を入れて、花を生ける。そのことにこだわるのは、造形的な美しさだけでなく「花が元気になる」という私の思い込みからです。何ら科学的根拠はないし、理屈もありませんが、使ってみると花が長持ちしてくれているように思えるのです。水は何日たっても臭くならないし、しおれかけている草花も、一晩でしゃっきとしてくれるそんな体験からそう思い込むようになったわけです。

草花が元気になっているような気がします
草花が元気になっているような気がします

花瓶の造形は、食器などに比べて自由度が高く限界はあるものの発想次第でいろいろなものを作ることができるのも作り手としては、魅力の一つです。

ボール型の花瓶。ヒノキと液体ガラス塗料
ボール型の花瓶。ヒノキと液体ガラス塗料

しかし、常時水に浸っている状態ですから耐水性を如何にしてあげるかというのが、悩みどころです。ほとんどの木工用塗料は、常時ぬれている状態での使用は想定されていません。ですから、花瓶での使用には不適切と言わざる得ません。元々、水に強い檜材を使うというのも有力ですが、無垢のままではひび割れなどが発生する確率が高く生き残る作品はまれです。

前がヒノキの無垢仕上げ。数少ない生き残り
前がヒノキの無垢仕上げ。数少ない生き残り

それで見つけたのが、「木肌一番」という浸透型の防水塗料です。水回りの使用を想定してあり、湿り気の多いところでも使用できるものです。撥水性も強くて長い期間水に浸っている状態でも耐え得る様子です。花瓶の内側の仕上げは今のところこれ一択です。外側の塗料は、比較的選択肢は多いと思います。オイルフィニッシュ、カシュー、ウレタン等等。木の持ち味を活かすためには、オイルフィニッシュが一番良いと思っています。

木肌一番とオイルフィニッシュ樹種は米ヒバ
木肌一番とオイルフィニッシュ樹種は米ヒバ

ここにたどり着くまでの試行錯誤は数知れずありました。

試した塗料も20種類は超えていると思います。薄く削れば、水に濡れて、乾燥した時にひび割れてしまいます。厚ければ、水の容量が少なくなります。ひび割れない程度に薄くが理想ですが、削り過ぎが怖いので、結果的に厚すぎる物になっていると思います。これからは他の樹種も試してみたいし、色や形も発想次第で楽しいものが作れると思います。

花瓶のような難問に挑戦することで、自分の技術向上にもなり、難問を克服した時の達成感は最高の気分です。あえて難問に挑戦したいのは、ここなのかもしれません。